☆浅野輝雄の絵本 ースペインのちいさなむら

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絵本を読む1 ースペインのちいさなむら


  • スペインのちいさなむら






    スペインのちいさなむら

    こどものとも352号 絶版
    19×26cm 32ページ 当時の定価250円



  •   ここは、すぺいんという くににある ちいさなむらです。
     やまの ふもとにある このむらは まっさおなそらに しろいいえ、それに おおきなきょうかいが ひとつあります。
      ぼくの おとうさんは、えかきです。このむらで えをかくために、 にほんから やってきました。 ぼくたちは、このむらで くらすことになりました。


  •   このむらには、どうぶつが たくさんいます。
    どのいえも 1かいは、どうぶつたちの うち、2かいは、むらのひとたちの うちです。
      やねは すなで できていて、そこに ちいさなはなが、 たくさん さいています。 ぼくの うちの となりには、ホセという おとこのこがいます。

    ひっこしてきたひの ゆうがた、ぼくが、いえのいりぐちに すわっていると、ときどきホセのうちの
     どうぶつたちの めえぇ、めえぇ、ぶう ぶう、こっこっこっこという なきごえが、きこえてきました。


  •  よくあさ、ぼくは、とても はやく めが さめました。どうぶつたちの なきごえが きこえてきます。  ぼくは そっと おきだして、 ホセのうちの どうぶつたちを みにいきました。
  • おしっこの においがして、がさがさっと ものおとがします。こやの なかは まっくらです。めをこらすと、ホセがいました。


  • ホセが「おいでよ」と、てまねきをしたので、ぼくは、いりぐちへ まわって、やぎや ろばたちの あいだを そうっと とおりぬけ、ホセの そばに いきました。
    どうぶつたちに、こんなに ちかづいたのは はじめてです。

    ホセは、みぎてと ひだりてを、かわりばんこに つかって、やぎの おちちを、ぎゅっ ぎゅっと しぼっています。ホセが ぼくの てをとって、やぎの おっぱいに、さわらせてくれました。おっぱいは、あたたかくて、やわらかでした。でも、やぎが うごいたので、ぼくは あわてて、てを ひっこめました。ホセが ぼくを みて、わらいました。


  •  やぎの おちちが、ばけついっぱいになると、ホセは、それを タンクに つめて、ろばの せなかに のせました。
     ホセが、ろばの たづなを ひいて、あるきだしたので、ぼくも いっしょに いくことにしました。
      ろばは、おもいタンクを のせて、ホセの、ぐぃぐぃぐぃと ならす あいずの くちぶえに、 おとなしく ついてきます。


  •   あまい パンの かおりがしてきました。そこは パンを やく おばさんの うちでした。
     ホセは おばあさんに、とりたての やぎの おちちを、わたしました。おばあさんは、 ホセに まるいパンと ながいパンを わたしてから、ぼくにも、まるい おおきなパンを くれました。ろばと やぎたちにも、パンの きれはしを たべさせてくれました。


  •   しばらくいくと、おおきな さくらんぼの きが ありました。
     さくらんぼを つんでいた おじさんは、ホセを みると、すぐに さくらんぼのはいった かごを、ホセに わたしました。ホセは、ずっしりとおもい かごを ぼくに あずけ、おじさんに やぎの おちちを わたしました。
     ところが、さくらんぼの かごめがけて、やぎたちが、ぐんぐん あたまを おしつけてきます。


  •  「わあーっ」と さけぶと、とっさに ほせが、ぼくを ろばの せなかに、おしあげてくれました。ぼくは、ぎゅっと ろばに しがみついていました。ろばの せなかは、ひろくて ゆったりしていました。じめんが ずっと したに みえます。ホセは さくらんぼの かごを、ろばに くくりつけました。ろばは おとなしく ぼくをのせて、あるきだしました。


  •   むらの きょうどうせんたくばにつきました。 ホセは ろばの からだを、ごしごしと あらいました。
     ろばは おとなしくしています。やぎたちは、はしらに からだを ごーり ごーりと こすりつけたり、くびを まげて、どすん どすんと、たいあたりしています。からだをかいているのです。

     このひから ぼくは、まいにち ホセと いっしょに すごすようになりました。


  •   あるひのあさ、 ホセの どうぶつごやへ いくと、 わらの うえに、やぎの あかちゃんがいました。ほそいあしを おりまげ、ちいさなかおを あおむけにして ねています。


  •    ぼくは おもわず ちかづいて、あたまを そっと なでてみました。
     ホセが あかちゃんを、ぼくの うでに だかせてくれました。
     やぎの あかちゃんは、 じっとしています。おかあさんやぎの においがします。あかちゃんの ぬくもりが、ぼくの うでに つたわってきました。
       


  •   やぎの あかちゃんを だっこしたひから、まもなくして、ぼくは ちちしぼりも できるようになりました。
     やぎの おっぱいを、みぎてで ぎゅっ ぎゅーっ、ひだりてで ぎゅっ ぎゅーっと、ちからを いれて、かわりばんこに にぎると、おちちが、しゃーっと いきおいよく でてきます。
     てに かかる やぎの おちちは、あたたかくて やぎの においがしました。


  •   あるあついひ、ぼくと ホセが きょうかいの ひろばで あそんでいると、おおきな、 2だいの トラックが のぼってきました。
    くさの はえている おかの うえに、やぎや ひつひを つれていくのです。ひとやすみするために、たくさんの やぎたちが、トラックから おろされました。


  •   トラックから おりてきた おじさんが、ぼくたちに ほしくさを わけてくれました。
    ほしくさを めがけて、やぎたちが はけしく ぶつかってきました。やぎたちは、ぼくの てからも、もぎとるようにして ほしくさを くちにいれ、いそがしく たべます。
     でも、ぼくは へいきです。もう ちっとも こわくありません。このむらへ ひっこしてきたころ、 やぎや ろばに さわれなかったのが、ふしぎなほどです。


  •    むらの やまに ひが しずむころ、きょうかいの ひろばは、 どうぶつたちと、いちにちの しごとを おえた むらのひとたちとで、いっぱいになります。どうぶつたちの なきごえや みんなの おしゃべりで、とても にぎやかです。ぼくは、どうぶつたちが いつも そばにいる このむらが、だいすきです。


  •   おしまい


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